【札幌 弁護士コラム】弁護士のビジネスを阻むメンタルブロックとは
こんばんは、荒木でございます。
今日は休肝日ということでダブルヘッダーで投稿します(笑)。
私(荒木)は、弁護士になって丸12年が経ちました。
最初はいわゆる四大法律事務所に所属して3年弱の間、大手企業の法務を取扱い、その後、札幌に移籍していわゆる街弁の事務所で2年弱、一般民事を含めた案件を取り扱ってきました。
その後、2014年に独立し、今に至っています。
こうして見てみると、いつの間にやら独立してからのほうが長くなっています。
そして、独立した後は、上場会社の社外役員をやらせて頂いたり、多くの企業の法務顧問をさせて頂いたり、別事業として相続対策のコンサル会社やM&Aの会社を立ち上げたりもしてきました。
そんなところで最近思うのは、「弁護士として大体のことはやってきたな」ということです。
もちろん、世の中には多種多様な案件の類型があり、かつ、それぞれの案件に一定の深みがありますので、全ての分野を知り、極めたなどと言うつもりは毛頭ありません。
しかし、「大体のことはやった」というのは、案件に関していわゆる土地勘のようなものを持ったということであり、初見の案件でも大体の筋道が見えるところまで来たという感覚があります。
そんなわけで、そろそろ弁護士と関係の薄い(関係のない)ビジネスをやってみたいと思ってウズウズしている今日この頃なのです(あ、しばらくはちゃんと弁護士業務もやりますのでご安心を(汗)。)。
ただ、同時に思うのは、弁護士としての経験が、それと関係のないビジネスに関わることの弊害になっている部分があるという点です。
すなわち、「弁護士のメンタルブロック」というべきものが一般的に存在します。
第1に、「弁護士は手を動かしてなんぼ」という世界にいたということです。
弁護士業は、弁護士法と日弁連が作っている弁護士職務基本規程というものに縛られています。
そのルールとして、「弁護士はすべての案件を把握していなければならない」とか、「スタッフに裁量を与えて案件を勧めてはならない」といったものがあります。
このため、弁護士は、自分の受け持った案件は自分自身で処理しなければならないという観念を強く持っており、他人に任せるということの思考回路が育っていません。
これが一般企業であれば、ある程度の規模になったら、当然、社長はすべての業務に携わるわけがないですし、顔も分からない従業員に仕事を任せていることなんて当たり前にやられていることです。
いいことなのかどうかは措くにしても、隣接異業種の税理士でも、職員に通常の業務を丸投げしている例は多く見受けられます。
ビジネスをスケールさせようと思ったら、次々に自分の手から業務を放していかなければなりませんが、弁護士にはそれができないというメンタルブロックが存在するのです。
第2に、弁護士には懲戒制度があるということです。
弁護士には主務官庁というものがなく、実は国からの管理監督というものは一切受けていません(他の士業には主務官庁があり、管理監督を受けています。)。
その代わりに弁護士会が弁護士に対する自浄作用を持つこととし、弁護士が弁護士職務基本規程に違反するようなことがあれば懲戒され、最悪、弁護士業を続けることができなくなってしまいます。
そして弁護士職務基本規程には、様々な規制があり、例えば「報酬を多く取り過ぎてはならない」ということであったり、「顔を合わせたことのない依頼者から案件を受けてはならない」ということであったり、「知らない人に営業を掛けてはならない」ということなどがルールとして定められています(ざっくりと説明したので厳密には少し違いますが。)。
そもそもの弁護士業の目的が、基本的人権の擁護と社会正義の実現にあるとされていますので、この目的にそぐわない行為については懲戒される可能性を持っており、それがいかにビジネス的に正しいとしても懲戒を受けることは大きなダメージになります。
このため、弁護士は懲戒制度によるプレッシャーを受けており、自由な発想ができないというメンタルブロックがあります。
第3に、弁護士には資本政策やレバレッジという観念がないことです。
弁護士の組織形態としては、個人事務所、共同事務所(組合方式)、弁護士法人の3つに分類されます。
個人事務所は、文字通り1人の弁護士が経営している事務所です(勤務弁護士を雇っているケースもあります。)。
共同事務所は、パートナーが複数いて、経費を共同するなど複数人で経営しつつ、法人化していないものです。
弁護士法人は、弁護士法で定められた法人形態であり、法人格を持つ形式です(出資者は1人のケースも複数人のケースもあります。)。
このような形態は様々あれど、弁護士以外が出資を行うことは認められておらず、弁護士が出資できる範囲でしか大きくなれないという制約があります。
借入れは一般企業と同様に可能ですが、人を雇うにしても、広告を打つにしてもあまり大きな借入れを行って事務所を大きくするという話は耳にしません(過払いバブルの頃は違ったかも知れませんが。)。
そもそも、投資の対象となる部分は人件費、家賃、システム関係程度であり、投資をしたからといって事務所規模を大きくできる業務形態ではないと言えるでしょう。
このため、弁護士には資本政策やレバレッジという部分の感覚が薄いというメンタルブロックが存在します。
第4に、弁護士にはビジネスやプロジェクトを創造する習慣がないことです。
弁護士業は、依頼者から相談を受け、案件に取り組むということが基本形態になっています。
弁護士のほうから、「訴訟やりませんか?」とか、「投資案件を組成しませんか?」といったようなことを依頼者に持ち掛けることはそうはあまりありません(最近だと過払いや肝炎訴訟などの類型はありますが。)。
そして、ビジネスシーンにおいて弁護士主導で何らかの新しいビジネスやプロジェクトを立ち上げるということもあまりないことといえます(もちろん例外的にいくつか有名になったものもあります。)。
受動的に動くということがどうしても習慣になってしまうのが弁護士の特徴であるともいえます。
また、新しいビジネスが立ち上がるような場合でも、法務面を見てほしいとなるのは、ビジネスが形をなし、会計的な面でのサポートが受けられるようになった後、というのが通常パターンではないでしょうか。
このように、弁護士にはビジネスやプロジェクトの先頭を走るような発想がない点でメンタルブロックが存在します。
このようなメンタルブロックがあると、やはり新しいビジネスを起こすような局面では出足が鈍ってしまうという側面があります。
そんなわけで、私(荒木)はこのようなメンタルブロックと闘い続けているわけですが、メンタルブロックを打ち破るような新しいビジネスを持ち掛けて頂けることは大歓迎しています。
面白い話がありましたらいつでもお声掛け下さいませ(笑)。
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